「自立ってなに?」で書いたとおり、自立とは独りでできるようになることではなく・・・
できないところをサポートしてもらい、それでできたのなら、それも自立って言うんだよって!
これは我が住人たちに限ったことではなく、僕らも同じで、日々いろんな人たちのサポートを受けながら、自立した生活を送っているのです。
しかし同じ「じりつ」でも「自律」となると・・・
「寝る前に食べちゃダメ!」って思いながらも、やっぱり今夜も食べてしまう。
「週に一度は休肝日!」って思いながらも、やっぱり今夜も飲んでしまう。
自分を律することは、誰にとっても難しい。
「自立はできても、自律はそう簡単にはいかない」のです。
当事者の親御さんたちから、相談を受けることのひとつに「何歳くらいで、ケアホームに入(い)れたらよいでしょうか?」ってのが。
僕はいつもこう答えます。
「本人が二十歳になったら、ケアホームのことを考え始めてください。」
ほとんどの親御さんは閉口します。
僕はさらにこう付け加えます。
「現状から言えばケアホームに行くと決めてから、ケアホームに入(はい)れるまで最低2年くらいはかかります。早くて2年です。親御さんたちでNPO法人を興して、ケアホームをなんてことなら5〜10年はかかるでしょうしね。」
ちなみに「障がいを持った子ほど、早くからケアホームに入(い)れた方がよいですよ。」なんてことを言ってる支援者もいますが、僕の意見とは別物です。
僕の考えは「ハンディを持っていようがいまいが、子供は早く独立させるべき」ってこと。
三十路を超えても自宅でなんか暮らしてたら、今更一人暮らしなんて面倒で・・・
「家にいれば、お母さんが洗濯でも、食事作りでも、なんでもやってくれるも〜ん。」って感じで。
ちょっと僕の偏見が入っていますかね(苦笑)
でもね、我が住人たちもきっと同じなんですよ。
自宅に長くいれば、長くいるほど独立しにくくなるっていう点において!
だから障がい者年金をもらい始める二十歳から、ケアホームについて真剣に考えた方がよいと・・・
だって考えてからケアホームに入(はい)れるまでには何年もかかるのだもの。
※用語解説 「ケアホーム」
一軒家を借りるなどして、複数の当事者が一緒に住む形態。
一見すると集団生活だが、それぞれ思い思いの生活を具現化することが可能。
具体的に言うと、食事の時間や起床時間をそれぞれの生活に合わせて決めることができるなど。
グループホームとどこが違うのかというと、基本的に発想は同じ。
自立支援法下ではグループホーム制度(比較的障がい程度が軽い人が対象)、ケアホーム制度(比較的障がい程度が重い人が対象)となっている。
しかしこれが我が住人たちの暮らし方の最良と言える形態ではない。
まだまだいろんな試みが模索されるべき。
「父ちゃんも母ちゃんも年だし、俺もそろそろ独立しないとな!」
残念ながら、我が住人たちは自らこのように考えたりはしないでしょう。
「今年こそケアホーム」と自ら律したりはしないのです。
だからケアホームに「入(はい)る」ではなく、「入(い)れる」なんです。
「子供を田舎の入所施設ではなく、自分の住む街のケアホームに入(い)れたい。」
それは親御さんの願いであり、当事者の願いではありません。
当事者の願いとは、ケアホームでの暮らしの先にあるのです。
要はそのケアホームが、希望を持って生きられる環境かどうかってこと。
「缶コーヒー」の内容と重複してしまいますが、やはり人は希望がなかったら、明日に進んでいくことはできないもの。
それは我が住人たちも同じです。
ケアホームでの地域生活は親御さんの願いの到達地点かもしれませんが、本人にしてみればそこが出発地点。
「入所施設に比べれば、ケアホームの暮らしは良い方だよね!」って問題ではないのです。
我が住人たちと手を携えて、彼らの願いを具現化しようとする努力が求められます。
な〜んて、口で言うのは簡単だけど・・・
実際は大変難しいことだと思います。
でもまずこのことに気付くことがスタートかと。