というわけで「僕たちの失敗(3)」の続き・・・
「彼はファッションにこだわりがあるよね」
こだわりは評価の対象にもなるのですが「なんかあの先生、黒板消しをきれいにすることにやたらこだわっているよね」などと・・・
評価の対象になりにくいこだわりは「固執」という言葉で置き換えてしまいがちです。
我が住人たちのこだわりを、どうも僕は固執と捉えていたのかもしれません。
さて窓枠を動かせないよう器具で固定した日、彼は午前、午後とも作業部屋に放尿しました。
彼が帰った後部屋を掃除しながら、明日からも窓枠の固定を続けるべきかどうか、僕は悩んでいました。
「窓が半開きになっていることが、そんなに彼の気持ちを追い詰めてしまうのだろうか?」
僕の中にはきっと「こんな些細なことで・・・」という思いがきっとあったのでしょう。
しかし現実として「窓の半開き」が、彼に放尿という不適応行動を起こさせているわけですから・・・
「やはり窓枠の固定を続行すべきではない!」
他の職員たちとも話し合い、窓枠の固定をやめることにしました。
あくる日、彼はいつも通り登所してきました。
彼の作業部屋にはもうウィンドウエアコンはありません。
その代わり扇風機を何台も回しています。
彼はいつもと同じように作業を始めました。
がんばって作業をしている彼の背中を見ながら、僕は自分がウィンドウエアコンにこだわっていたことに気付きました。
「保護者に無理をいって買ってもらったものなんだから・・・」
僕は自分の建前を、彼に押し付けようとしていたのです。
僕に反省と気付きが生まれ、「一件落着」と思ったのも束の間・・・
彼の放尿は窓が閉まっていても止まりませんでした。
彼の気持ちをないがしろにして失った信頼は、そう簡単に回復とはいかなかったのです。
我が住人たちと現在、そして未来において関わる方々へ
僕はつまずいて学んだ者です。
彼らを傷つけて学んだ者です。
これからも「僕たちの失敗」を、包み隠さず話していきたいと・・・
だからどうか僕と同じつまずきをしないでほしい。
「僕の失敗から、つまずかない強さを!」なんて勝手なことを・・・
「僕たちの失敗(5)」はいずれまた・・・